ヘッドホンマッチングトランス製作依頼品(7)

先日製作したヘッドホン用トランスですが、依頼主様の元から便りが届きましたので紹介します。

元々、ゼンハイザーのHD25とWALKMANの組み合わせでお使いでしたが、低音がスカスカで残念な音でどうにかできないかと調べている際に、ここのサイトにたどり着いたそうです。

いろいろお話を伺った上で、ご満足いただけるものが提供できるのか心配要素は多かったものの、私自身も改めてヘッドホンとトランスの組み合わせでの試聴を繰り返した結果、低域の改善が得られる見込みがあるということになり、製作をお受けすることになりました。

当ブログにて製作過程を紹介してきたように、非常にタイミングが良く染谷電子さんからも超特急でトランスが仕上がってきたこともあり最初のメールから約10日間で製作からお渡しまで遂げました。

オーディオ機器は嗜好品なので私や周りの知人による評価が良くても依頼主様の好みに合うかどうかは大変心配でしたが、「全体的な音の厚みが増したように思います。ポータブル環境でもヘッドホンからちゃんとした音が出て感動しました。」ということで良い第一印象だったようでひと安心しました。

その後いろいろなヘッドホン等と組み合わせを試されているようですが、やはり組み合わせによる相性もあるようです。そんな時のために用意して一緒にお渡しした10Ω抵抗入りの接続ケーブルも含めてテストしていただいています。こうやって取っ替え引っ替えしながら試聴するのも楽しいものです。
試聴された中で特に良かったのはゼンハイザーHD650とのことでしたが、ヘッドホン自体が優秀なのはもちろんですが、やはり300Ωという高いインピーダンスを持つヘッドホンとの組み合わせはバッチリだと思います。

またいずれその後の様子をお話を聞かせていただけたらと思います。ありがとうございました。


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ヘッドホンマッチングトランス製作依頼品(6)

さてさて製作も最終段階に入りました。
測定によるチェックの後、あらためて聴取によるチェックを経て、残るはラベル貼り付けのみです。
1号機では無地でしたが、お渡しするものですので操作部の表示を作成して貼り付けます。



ラベル作成にはいくつかの方法がありますが、PCでデータ作成のできるテプラが自由度が高く便利です。
こんな時くらいしか出番がないので個人持ちは正直厳しいのですが他に良い代用がありません。
DSC_2248.jpg




この銀色ラベルはバリエーションが少ないので印字後に必要な幅にカットして貼り付けます。
DSC_2255.jpg



そしてようやく完成となりました。
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6回に渡ってお送りした製作過程はいかがでしたでしょうか?
あとは手元から離れていくのを惜しみつつユーザー様の元へお届けするのみです。
最後までご覧いただきありがとうございました。

ヘッドホンマッチングトランス製作依頼品(5)

さて、いよいよ完成も間近になってきました。
今日は特性の測定です。誤配線や不良がないかのチェックとともに、実力性能もチェックしていきます。
DSC_2231.jpg



実は今回はこの測定にかなり苦労をしました。
トランスをチェックするにあたり、アナライザの最小出力インピーダンスの40Ωでは高すぎてしまい、これでは実際の使用環境をかけ離れてしまうため測定ができません。そこで出力インピーダンスが0に近く、限りなく特性の良いバッファアンプが必要となります。
今回はLME49600を使用したこのキットを使用してみました。
出力インピーダンスやドライブ能力、周波数特性は申し分ないのですが、やはりネックとなったのは歪率です。LME49600自体はTHD+N 0.00003%となっていますが、実際にはこうはいきません。
一番の問題は信号入出力がアンバランスであること。日常的な測定で経験しているものの、アンバランス接続ですとどうしてもノイズの影響を避けられません。
THD+Nの測定ではヘッドホンアンプの通常の出力電圧がせいぜいmV程度ですから、μVオーダーのノイズが測定値に影響を与えてしまいます。今回も切り替えながら測定する度に指示値が変わってしまったりする始末。
電源に絶縁トランスを入れたり色々試ししましたが、なかなか思うようにはいきません。
通常の歪率測定では周波数ごとに値が変わることは少なく、ノイズがあっても底上げされるだけなのですが、トランスの場合はカーブ自体が変わってしまいノイズとの見分けもつきにくいようです。
試行錯誤した結果、どうにか公表できる値が出ましたので参考用として掲載します。


測定条件について、とくに条件の書かれていないものは発振器500mV出力、ソースインピーダンス5Ω、負荷63Ω、インピーダンス切り替えLow側になっています。




まずは周波数特性。

インピーダンス設定 Low 63Ω負荷時
freq63ohm.jpg
出力端のレベルは700mV。申し分ないフラットな特性でしょう。電力は7.7mWです。




続いてインピーダンス設定 Hi 300Ω負荷時
freq300ohm.jpg
出力端は1.4V。こちらも素晴らしい特性です。
300Ωのヘッドホンを直接接続した場合、0.8mWほどしか出力されないのに対し、本機を通した場合は6.5mW得られる計算です。音が小さい問題を十分に改善できるでしょう。




チャンネル間位相
トランスの個体差がある場合、チャンネル間に位相差が現れてしまう可能性があります。念のためチェックします。
chphase.jpg
位相差は全域に渡ってほぼ0。良好です。





入力および出力側から見たインピーダンス
トランスを通した場合、ヘッドホンからプレーヤ側がどのようなインピーダンスに見えるか、プレーヤーからヘッドホン側がどのように見えるかをチェックします。

出力を63Ωで終端した場合、プレーヤーからみたインピーダンス
Z_Lo_63term.jpg
1kHzで17Ωほどにみえているようです。ほぼ設計通りです。


インピーダンス設定Hi時、300Ω終端でプレーヤーからみたインピーダンス
Z_Hi_300term.jpg
こちらは20Ωとしてみえています。正常に動作しています。



今度はヘッドホン側からみたインピーダンス
入力を5Ωで終端した時、出力側からみたインピーダンス(設定Low)
Z_Lo_input5ohmterm.jpg
1kHzで26Ωほどになっています。


インピーダンス設定Hi
Z_Hi_input5ohmterm.jpg
1kHzで104Ωになっています。

このようにアンプ側のインピーダンスが若干高くみえるようになることでダンピングファクターが変わり、音の質感の向上に繋がっているのではと思われます。
もう少し大きなソースインピーダンスになっても良いかもしれませんが、機器との相性や音量との兼ね合いもあるのでこのくらいが良い所だと思います。
音量に余裕があれば一次側に10Ωくらいを挿入して、完全にマッチングをとるのもいいかもしれません。



最後に歪率。
ノイズなどの影響を受けやすいのでどの程度信頼できる値かは何ともいえませんが、参考として載せておきます。
発振器出力500mVと100mVにてデータを取りました。
電圧が高いほうがノイズの影響は少なくデータが取りやすくなりますが、トランスは基本的に電圧が高いほど歪が増えます。一般的な聴取レベルとしてはこの中間もしくは小音量ならそれ以下になると思います。



発振器出力500mV時 63Ω負荷 設定Low
THD500mV.jpg
実線がLch、点線がRchです。偏差は少なく収まっています。
出力端は900mVで約13mW出力です。




発振器出力100mV時 63Ω負荷 設定Low
THD100mV.jpg
出力端180mV、約0.5mW出力です。



測定結果は以上です。
なかなか良いスペックに仕上がっていると思いますが、いかがでしょうか?

ヘッドホンマッチングトランス製作依頼品(4)

さて、なんだか超特急でトランスが巻き上がってきてしまったので早速、組立に入ります。

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まずは例のタワーを建てます。実物見ると分かるのですが、この方法だと楕円形のケースにピッタリ入ります。
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次はちょっと複雑なスイッチの配線。二次側をシリアル・パラレルに切り替えるため4回路のスイッチを用いています。今回は電線を絡げましたが、作業性を考えるとやらなくて大丈夫でしょう。配線が多いこともあり根本にストレスがかかりやすいので、すかさず熱収縮チューブをかぶせます。
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後半はけっこう細かくて大変です。
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入出力端子とアースを接続し、あとはフタをして完成です。
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とりあえず音出しが可能な状態になりました。ケースは保護のため紙をかぶせてあります。
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初号機と一緒ですが、これを繋いで音を出した瞬間「おっ!」と感じるものがあります。やはり低域の出方なんでしょうかね。なかなかのお気に入りです。このニュアンスが伝わるといいのですが。

あとはラベルの作成と、音出しなどしばらくチェックをしたいと思います。

ヘッドホンマッチングトランス製作依頼品(3)

さて図面も出来上がり、いよいよケース加工に入ります。


プリントアウトした型紙を切り抜き、ケースに糊で貼り付けます。
こういう時はやはりレーザープリンタが滲まず便利です。

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ボール盤を使い、センター出しも兼ねて最初に小さな穴を開け、徐々に大きく開けていきます。
プラ素材は食いつきやすいので気をつけましょう。世の中にはプラ用の刃もあるらしいですが…。
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なかなかピッタリの位置に開けるのは難しいものですが、型紙のおかげで上手いことセンターに開きました。この作業はやはり集中力が命です。気の向かない時は絶対面倒になってズレますね。
今回は素材がプラなので良いですが、金属の場合は油まみれになるので大変。
でも、たまには油まみれにしないと機械も工具も錆びてしまうよ。
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背面パネルは皿ネジなので皿モミを。深さは目見当と測りながらで。
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例の突起はエンドミルできれいに取り去られました。
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型紙を剥がして洗浄して出来上がり。
DSC_2183.jpg




パーツを仮止めするとこんな感じに。
DSC_2189.jpg



次は組配です。
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