スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Pure2のノイズで学ぶ現代のオーディオ修復技術

昨日、機材のチェックを兼ねてSACDハイブリッドの「Pure2 Ultimate Cool Japan Jazz」を聴いていたんですよ。このCDはオーディオマニア界隈ではけっこう有名な盤で、原曲を知らない人は知らないでいるほうが幸せなのですが、90年代の懐かしいエッチなパソコンゲームの主題歌やBGMなどをジャズアレンジしたCDです。

で、メンテした機材を通して再生して流し聞きしてたら、なんかボーカルが歪むんですよ。ビリビリッって。
やべ、なんか壊れたかな? とか焦って機材をひと通り調べたら、どうやらCDソースそのものが歪んでるわけで、あらびっくり。

音質を売りにしているCDなのに、音が歪んでるって何だよ。

ネットで検索してみたら、発売当初にも「6トラックにノイズがある」と気づいた人は多く居たようです。
2011年発売の盤なので、もう2年も経つんですね。そろそろPure 3が出るそうで。

このCDはそれなりに気に入っているのですが、特定の曲を再生することはよくあったものの、通しで聞く機会があまりなかったのでいままで気づきませんでした。6トラックの「トモシビ」がボーカル主体の構成で歪が目立ちやすいのですが、全体的にその傾向はあるようです。

ライナーノーツを見てみると、ボーカルのマイクはALTEC 639BだったりRCA 77DXだったりと古いリボンマイクなので多少の不調は仕方ないかなーと思ったのですが、この後の調査でとんでもないことが判明したのです。



「音圧の上げ方が雑なために波形がクリップして歪が出てただけ」



なお、これらはSACDの再生環境がないのでCD-DAで確認していますが、ネット上ではSACD層も同じようにノイズがあると書かれていましたので一緒でしょう。

でも、それもちょっとおかしいですね。PCMのフルスケールで起こっているクリップ歪がSACD層にもあるって。PCMでガチガチに音圧上げてマスタリングしたソースをそのまま1bit変換してSACDにしちゃったんでしょうかね。



とりあえず検証と修復について記しておきます。勝手にリマスターして歪のないバージョンのCDを作ります。



まずはノイズ(歪)部分の波形の目視での確認です。
pure_clip.png

ご覧の通り、無茶して音圧稼ごうとした(もしくは前段階での録音レベルの不適切な設定)による波形クリップ歪です。一応マージンは0.1dBあるみたいですが、マキシマイズ系のソフトのリミット設定なんでしょうか。

ひと昔前は鉛筆ツールで波形書くとか古典的な方法で修正していたのですが、現在はいいツールがあります。



iZotope RX 2のDeclipツール。名前まんまです。
pure_declip.png

-0.3dBに達したものをクリップとみなし、クリップ部分を補完し、飛び出した部分を収めるために5.3dB全体のゲインを下げますよという設定です。これは実際に聴感でチェックしながら、修正後にCD全体で最大レベルでクリップしないように設定した値です。



Declip使用前
pure_before.png


Declip使用後
pure_after.png


全体のレベルが5.3dB落ちてしまうのも気になりますが、波形を見た感じで精神衛生上とても良い感じになったと思います。


pure_hikaku.png

ProToolsに並べてレベルを揃えて比較試聴します。クリップ歪の出ていた部分はまず気づかないくらいに修復することができました。


波形比較
pure_hikaku2.png


ちなみにクリップ歪を自動的にチェックできるツールもあります。
pure_meter.png

今回のようにはっきりと目視でわかるノイズの他に、インターサンプルピークなどと呼ばれるサンプリング間に仮想的に存在するクリップによる歪についてもチェックできます。問題の箇所を再生するとログがダダダーっと流れるのが爽快です。





さて、歪問題についてはこれでバッチリですが、これらの作業をやっている間にもうひとつの問題を発見しました。
高域の15.75kHz近辺に常にノイズが乗っています。耳の良い人には「ピー」と聴こえるはず。

pure_spect.png

こんな感じでレベルとしては-60dB程度とごく微量なのですが、こうやって山が立っていると気になりますね。
周波数からして、テレビの水平走査周波数だと思います。ケーブルが近接していて拾ったとかでしょうか。

pure_noise.png
このように音のある部分、ない部分にかかわからずレベル一定で乗っているので、おそらく2ミックスの段階かマスタリングの段階で混入したのではと推測されます。


これも除去は簡単。フォトショップの操作と同じように、取り除きたい部分を選択ツールで囲って削除を行うだけ。

処置前
pure_noise1.png


囲って…
pure_noise3.png



削除!
pure_noise2.png



処置前
pure_spect3.png


処置後
pure_spect2.png


バッチリです。




ちなみにこのノイズですが、曲によってレベルが若干変わったり、周波数もズレがあるようです。
pure_noise4.png


Tr.10は15.75kHzのノイズが極小さく、Tr.12にあたってはノイズの存在が認められませんでした。録音や編集の方法が違ったのでしょうか?
ちなみにライナーノーツやweb上のインタビューを読むと、ボーカル曲はProToolsによる録音、インスト曲は2インチアナログMTRだそう。全曲であるかは不明なものの、マスターはアナログテープを用いているとか。

いずれにせよ、マスタリング、もしくはそれに近いミックス作業の終盤あたりで混入したのではないかと思われます。
15.75kHzはレベルが低いこともあって聴感で気づけるかは疑問ですが(そういえば私もまだちゃんと聴いていなかった…)、ボーカルの歪は制作中に誰も気づかなかったのでしょうか? アイドル物のJ-POPとかならまだしも、一応音質を売りにしているCDでここまであからさまなクリップ歪は正直どうかと思います。
まあ、6dB音圧レベルが下がった場合のクレーム数と比べたらクリップ歪に気づいてクレームを入れるオーディオマニアは少ないと判断したのかも、しれないですけどね



こうやって完成したものを、CDマスタリングソフトを使って元の盤からCUEシートを吸い出して、オーディオファイルを差し替えてCD-Rに焼いて自己リマスタリング盤の完成です。これでクリップ歪がなく安心してPure 2を鑑賞することができるようになりました。
pure_master.png



記事中においてメインで使用したオーディオ修復ソフト「iZotope RX 2」は下記のメーカーサイトでデモ版が入手可能です。上記のパラメータを使用してクリップ歪が改善されることを是非お試しください。
ttp://www.izotope.com/products/audio/rx/download.asp

なお、同サイトでクレジットカード決済、ダウンロード販売で簡単即時に安価で購入可能です。概ね日本語対応みたいですし私も簡単に買えました。
別に回し者ではないですが、便利でいいツールですよ。


※追記
ミックス段階で歪が発生した可能性が否定できないためマスタリングが悪いと書くのをやめたのですが、こうやってユーザーサイドで修復可能であるということは当然マスタリング段階で気づいて修復することも可能だったはずです。そう考えるとやはり責任はマスタリングにあるのでしょうか? ライナーノーツには国内トップクラスのスタジオのチーフエンジニアの名前が記されているのですが、一体どうしたものでしょうか。


CD全体で差分出してみたよ。
pure_clip2.png

クリップの量よりクリップした部分が何の音であるかが問題みたい。やっぱボーカルの歪は分かりやすい。改めて聴くとTr.3もかなり歪が気になる。
マスタリングって曲ごとで聴きながら調整するものだと思っていたけど、これを見るとおおまかにざっと決めて、あとは同じ設定で流し込んだだけにしか見えないなあ。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

このディスクのこと、あちこちで「リファレンスCD」だって書いてあるよ。リファレンスとして使用していてみんな気づかなかったのかなあ。
ケーブルの音がっ! オペアンプがドヤッ! とか言う前に、ソースの問題に気付けないとは100年早いぞ!?w


問題の曲「トモシビ」のレコーディングのレポートみつけた
ttp://www.phileweb.com/review/column/201105/18/176_2.html

No title

音が歪んでいるCDには時々遭遇します、記録レベルピークで歪むものマージンがある状態で歪む物ちょっと残念ですね。

No title

歪むCDけっこうありますよね。

音が良くて気に入っている盤ほどクリップ歪があったりして残念に思います。

エンジニア側も仕方なく目をつむっている部分も多いでしょう。
音圧戦争とかいろいろ事情はあるんだと思うのですが、ユーザーが賢くなって改善するよう求めていくしかないと思います。

No title

こんにちは。
MCトランスを検索していたらたどり着きましたが。
音圧競争によるクリップ歪みは興味深く読ませていただきました。
単なるハイ上がり/ローブーストではない音の悪さきつさの原因がわかって精神的にはすっきりです。

さっそくiZotope RX 4を購入しましてクリップ除去に取り組んでます。
それだけですっきりする曲もありますが、クリップ歪みによる低音の迫力感に合わせて高域を思いっきり持ち上げているような曲もありまして。
その分EQで高域調整をしないといけなかったりと、一筋縄ではいかなかったりもしてますが。
楽しみながらやっております。

今後も楽しみに読ませていただきます。

プロフィール

fixer

Author:fixer
http://fixerhpa.web.fc2.com/
Twitter @fixerhpa
頒布中のバランスキット関連はこちら

最新記事
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

検索フォーム
最新コメント
カテゴリ
RSSリンクの表示
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。