ヘッドホンアンプ設計・試作その2

DRV134とST-71を使ったポータブルヘッドホンアンプの自作ということでお送りしていますが、試作や試聴の結果、回路が決まりましたので基板を組んでみました。

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使用したユニバーサル基板は共立のC-1です。このサイズの基板は秋月のCサイズとBサイズの中間でとても使いやすいサイズなんですが、他での扱いはないようです。とても気に入ってるんだけどなあ。ってか共立で買うものってこの基板くらいしかないw

一応、ポータブルなサイズに収めたいなってことでギリギリラインだと思うんですが、こうやって基板上に電池ボックスを配置しておけば裸のままでも使えますし、ケースにもすっきり収められそうです。

抵抗1本すら使わないというコンセプトで設計しただけあって、回路を構成する部品は10点もありません。


回路図
ST71HPA_sch.png

パターン
ST71HPA_ptn.png



これだけ部品数を抑えて良いアンプが組めるのはバランスドライバICのDRV134のおかげです。DRV134には差動出力を得るための3個のオペアンプを内蔵しています。よって電源と信号を繋ぐだけで高品質なバランス出力が得られます。この出力をサンスイのトランスST-71で合成してアンバランスに戻します。

DRV134でバランス化するメリットは、電源電圧に対して大きな出力電圧が得られることと、バランスにしていることでポップノイズが発生しないことです。オペアンプでは音質にも定評のあるバーブラウン社のICで、長いケーブルもドライブできる安定性も信頼感に繋がります。

なお、DRV134は電源電圧±4.5Vが下限なので9V電池だと若干不足気味ですが、±3Vくらいになってもなんとか動作は大丈夫そうです。単三電池2本でDCDCコンバータ入れる方法も良いとは思うのですが、とりあえず9V電池で様子を見ることにしました。
9V乾電池1本で動作させる場合は単電源となるため、GND電位の生成にはレールスプリッターのTLP2426ILPを用いました。仮想GNDとはいっても出力は対GNDで動作しないため、GNDが必要なのは入力信号の基準点だけなので、正直なところデカップリングの無い抵抗分圧でも良いくらいです。
むしろ、試作時の動作チェックではSens端子をきちんと接続してやれば上手いことバイアスが掛かるので、電源としてのGNDは存在しなくても、極わずかにTHD+Nが上がる程度で、全く問題ないくらいでした。

出力段のトランスはサンスイのおなじみST-71です。600Ω:600Ωなので公称値としては高すぎるのですが、低い送り出しインピーダンスで動作させるため、特性を取ってみても低域、高域とも全く問題なく、タムラのトランスなんかと比較しても音の質感も全く問題なく良好なのでこれを用いることに決定しました。
一次側はセンタータップを使用して150Ω:600Ωとして2倍の巻線比として使用します。出力レベルとしてはヘッドホンのインピーダンス、トランスの変圧比、DRV134の出力インピーダンス(50Ω×2)によって決定されますが、これも特性を取って、ヘッドホンのインピーダンスの高低にかかわらず必要十分の音量が得られることと、周波数特性や音質チェック等の結果を考慮して決定しました。
負荷にヘッドホンが接続された場合、DRV134から見た負荷インピーダンスは想定された負荷の値である600Ωを下回ってしまいますが、信号レベルが低いので問題ないだろうと大目に見てもらうことにしましたw
まあ、Cold側をGNDに落として使っても良いというICなので、全然問題ないでしょう。

その他の回路パーツですが、電源ラインのダイオードは9V電池の逆接防止用で、ショットキーバリアダイオードのRB441Q-40です。Vfが低いとはいえ0.45Vロスるのは勿体無いので、気をつけて使用するなら省略していいと思います。
電源デカップリングの電解コンデンサは試作時には入れないでテストしていましたが、一応入れることにしました。低ESRの100μFです。電圧波形を見るとこの程度の容量ではまだ低域成分でガンガン振られるので、本来ならもっともっと大きくするんでしょうが、別に電源が揺れたところで出力には基本的に影響しませんので気にする必要はありません。GND電位も含めて神経質にならずに済むのは、今回の回路構成を極限まで単純化したおかげでもあります。シンプルイズベストで良い事ずくめです。

あ、ボリュームですが今回は省略することにしました。iPodの出力に繋ぐならiPodのボリューム使えばいいんです。iPodのヘッドホン出力の電気的特性は素晴らしいので、外付けでヘッドホンアンプをつける意味は味付けをすることだけで十分です。



それでは測定にいきましょう。


トランスを使った回路の場合、負荷の特性や信号レベルによって動作が変わってきますので、代表的な負荷や信号レベルにて特性をとりました。

※以下の特性は後の回路変更によりSens端子4箇所を外した状態で行っています。これによりゲインが若干高くなりますが、iPodの最大出力レベルである1Vrmsを入れた時はクリップが発生します。


周波数特性
ST71HPA_freq.png

周波数特性は信号レベルが高くなって低域の飽和が始まるとレベルが低下するので、高すぎない値、そして一般的かつ低めの負荷インピーダンスとして32Ωで測定しました。
負荷がオープンになると超高域で上昇しましたが、600Ωも負荷がぶら下がっていれば十分にフラットになりました。というか、なるように設計したんですが。



歪率 THD+N 帯域制限80kHz
ST71HPA_thd.png

32Ω負荷にて1kHzの最大ノンクリップレベルである200mVでの特性と、その1/10の20mVで測定しました。
最大レベルで1kHzにおいて0.006%が得られていますので十分な値でしょう。ただし最大レベルでは低域の飽和が始まっているのが見受けられます。でもこれはクリップ歪ではなく隠し味として働く重要な要素です。これが今回の狙いで、低域の豊かさ的な部分を生成しています(と思っている)。


無負荷時ゲイン 約8.7倍
※Sens端子を外してゲインを上げたため、入力450mV程度でクリップします。

無負荷時ノンクリップ最大出力レベル 約4Vrms
32Ω負荷時 約200mV

無負荷で4Vrmsということは11Vp-pもあるってことか。ブリッジ+トランス昇圧の効果すごいな。

出力インピーダンス 約540Ω

出力インピーダンス、高いとは予想してましたが、算出してみるとだいぶ高いですね。
でもこれもiPodが電圧駆動なので、電流駆動のような要素を盛り込みたいと考えていたので狙い通りです。
電池駆動なのでロスが出るのは若干勿体無い部分もありますが、仕方ないです。
使用時の消費電流は10~20mA程度なので実用範囲ということにしてください。


残留ノイズ
8.6μV 帯域 <300kHz
2μV Aウエイティング (無負荷時34μV)

ノイズレベルはかなり低い部類に入ると思います。これはやっぱり差動回路とトランスのアイソレーションの相乗効果なのでしょうか。


あとch間クロストークは可聴域において80~90dB程度確保できているようです。


ってな感じで、思いつきで作った割にはずいぶん良い感じに仕上がったと思います。
特性はともかく、音質についてもiPodのヘッドホン出力とは動作が違うのではっきりと音質の違いを得ることができ、トランスの特性と出力インピーダンスの高さから得られる低域の豊かな感じが聴き疲れせず良い感じです。

価格についてはDRV134がDigikeyなら安いものの、国内だと割高で入手できるお店が少ないのがネックでしょうか。手に入らなければSSM2142でも良いでしょう。トランスは当初は専用設計にしようと思いつつコストが上がると悩んでいたものの、ST-71でこの特性と音質なら文句なしです。

そうそう、トランスの出力はフローティングなのでGNDをまとめなければそのままバランスヘッドホンアンプとして動作できるんだよね。これも試してみたい。

とりあえず次はケースの調達でしょうか。タカチのKC3-8-10に入るんじゃないかと思ってるんですが、どうでしょうか。
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No title

こんにちは。染谷電子トランスに続いてヘッドホンアンプも追試
させていただきました.ペルケ氏のFET版で打ち止めかなと思って
いたのですが、こちらもメッチャ楽しい(笑)。
大変ためになる記事ありがとう御座いました.

No title

楽しんでいただいてるようで何よりです。
このヘッドホンアンプはかなりのキワモノですが、他のアンプには無い独特の雰囲気が味わえたことと思います。

追試による感想や発見などなどありましたらお聞かせください。

作ってみました。

仕事でセンサ模擬回路にDRV134PAを使っていたのですが、オーディオ関係のお仕事されてる知り合いとの繋がりから、本来のオーディオ目的で何か作ってみようかなと思って調べているうちにこちらの方に来てしまいました。
回路もシンプルで面白そうなんで、早速作ってみましたが、なかなか気持ち良く鳴ってくれますね。
それに色々詳しくてミスることもなく一発で動きました。
どうもありがとうございます。
プロフィール

fixer

Author:fixer
http://fixerhpa.web.fc2.com/
Twitter @fixerhpa
頒布中のバランスキット関連はこちら

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