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ランティスのアニソン ハイレゾ音源

ハイレゾ音源のDL販売サイト、e-onkyo musicから、ついにランティスのアニソンが発売されました。
J-POPを置いて先にアニソン来たか! って感じですが、興味深いのは販売される音源が普通のリマスター盤ではなく、マスタリング前の素材をそのまま配信するという点。紹介記事には 「TRUE STUDIO MASTER」はスタジオにて、エンジニアによりミックスダウンされたマスターファイルを手を加えること無くそのまま配信するもの。 と書かれています。
CDになる前の、ミックスダウンされた素材が直接聴けるという興味深い点もありますが、もっと気になるのは、今回こうやってマスタリング前の素材が「高音質です」ということで販売されてしまうと、「マスタリング=音を悪くする」とか、マスタリングの存在意義が問われることになるのではないかという心配の面でもあります。

本来のマスタリング作業は、ミックスダウンの段階ではその場の最高の音を目指して、マスタリングでは販売される形式の器に合わせて調整しますよ。っていうのが綺麗事だと思うんですが、まあ実際は(音質を犠牲にしてまで)音圧を上げる役割だったり、ミックスダウンの時に出来なかった不満を修正するとか、そういう感じになりつつある面もあるようです。

CDの音圧戦争はまだまだ続くようですが、特にランティスのCDは波形がクリップして音が割れてもそのまま販売しちゃってクレームも無視しますよ、って感じらしく、Amazonのレビューなんか見ると悪評で酷いもんです。

これだけ不満を感じる人がいても、販売側は「歪んでなんかないよアンタの機械がデタラメなんだよ」と思い込み、疑わないようです。もしかしてスタジオのスピーカーの前に歪を取るノイズリダクション装置がデフォルトで挟んであるんじゃないかと思うくらいですw

さてさて、そんな現状の中で始まったランティスのハイレゾアニソン販売ですが、いったいその音質はどうなのか? 早速購入して試聴そして解析してみることにしました。


購入したのはラブライブの「夏色えがおで1, 2, Jump!」と、「Mermaid festa vol. 1」のOff Vocalトラックを含んだ計4曲、1600円です。試聴してMermaid~が気に入ったのでコレにしました。
e-onkyoは始めてですので、会員登録をしてクレジットカード決済で購入しました。購入自体は簡単ですが、驚いたのは購入後1週間しかダウンロードの権利が無いという点です。ファイルが消えたらお終い。さすがにどうかと思いました。


さて、曲のレポートの前に、まずはファイルの詳細から。
ダウンロードしたWAVファイルをバイナリエディタで開いてみます。
メタデータ

するとProTools(世界標準のレコーディングソフト)の文字が!
というわけで、メタデータが残ってるんじゃないか!?

夏色えがおでメタデーター

早速ProToolsで開いてみるとご覧のとおり、本来のファイルの作成日時や時間軸情報が残っていました。
このファイルは2011年の5月と7月に録音されたものだということがわかりました。(深夜にご苦労様です)
CDが発売されたのが2011年の8月ですから、それに合わせてミックスダウンされたファイルが「本当にそのまま」販売された「TRUE STUDIO MASTER」であることが確認できました。

なんかもう、こうなったら一般宅にもProToolsを配備して、購入したハイレゾ音源をそのままProToolsに貼り付けて、時間軸もオリジナルと一緒にして、小節数でも数えながら聴いたらいいんじゃねーかと思うよねw

ちなみに、夏色えがお~のテンポはBPM170で、Mermaid~はBPM127でした。
デジタル環境で制作、出力されたファイルなので時間軸も完璧に正確。再生しながらクリック(メトロノーム)を鳴らしても、全くズレることがありません!


ではお待ちかねの波形比較です。


曲全体
波形比較1


部分拡大
波形比較2



えっ!?

「ダイナミックレンジを最大限に表現するためにCD音源より音量が若干小さくなっております。」

じゃなかったの??????
普通にレベルガチガチじゃんwwwww

実際に聴き比べてみても音圧の差はほぼ無いに等しく、VUメーターでサビの部分をチェックしたところCD版が約0.5VU(dB)ほど大きく触れるものの、これでは差があるとはいえません。

音質としてはファイルを並べて切り替えて聴くと、ほぼ違いはありませんが、CD版のほうが、若干中域が持ち上がって、高域が出ていないラジオっぽい音質に感じられました。マスタリングで弄ったのでしょうか?

これでは正直なところ「ハイレゾ」とは名ばかりで、わざわざ購入することに意義のあるものとは思えません。

まあ、いまどきはミックスダウンの段階でも「最終的に音圧を上げること」を意識して作ったり、既にミックスの段階でマキシマイザーを掛けて音圧を上げちゃったりするみたいなので、予想できた範囲なんですけどね。

やっぱり、ハイレゾ配信するならミックスダウンやり直さなきゃいけないんじゃないのー?


で、感覚的なことばかり書いても信憑性が無いでしょうから、データを載せていきます。

まずはスペクトラムアナライザでの周波数特性の比較から。
曲全体で平均を取って、CD版とハイレゾ版での違いがあるかチェックします。

夏色えがおスペアナ

はい。
CD版のほうが中域が出ている感じ、しっかりスペアナで確認できました。
200Hz~1.2kHzくらいの帯域で2~3dB程度持ち上がっているようです。おそらくマスタリングで持ち上げられたのでしょう。
また、気になるのがCD版の16kHz近辺で変なスペクトルが曲の終始通して出ている点です。
これはPure2の時と一緒ですが、おそらくテレビの水平走査周波数の15.75kHzがノイズとして干渉してしまったことと考えられます。マスタリングの際にTVの近くにケーブルを通って拾ったのではないでしょうか。
せっかくProToolsでデジタルで作ったのに、マスタリングで一旦アナログにしたんでしょう。アナログ処理による弊害は時間軸でも表れました。

波形比較3

2つのファイルを並べて同時再生した場合、イントロの部分では同時に鳴っていても、曲が進むにつれてだんだんとズレが生じてきます。約4分間の曲が終わる頃には10ミリ秒ほどのズレが発生していました。速度偏差で約0.004%。BPM170のテンポの曲が170.0068とかに狂った状態です。
まあー、A=440Hzの調律が440.0176Hzになる程度だから、まず問題にはならない誤差ですが、「マスタリングのクロック精度はルビジウムで高音質!」なんて現在の風潮を考えると、この精度は疑問ですね。


さてさて、だいぶ細かいどうでもいい話に走ってしまいましたが、本題に戻りましょう。

今回のハイレゾ音源に意味があるかどうか。

私はNoだと思います。いくらハイレゾつったって、元の録音が良くなければ全く意味がない。ハイレゾじゃなくたって、これより音の良い(というか、音の悪くない)CDはたくさんある。もう少し基本をきちんと抑えて欲しい。

比較したCDおよびハイレゾの音源について、今回の楽曲ではあからさまなクリップ歪は確認できなかったものの、曲中では酷い歪みとしてしか聴こえない箇所が存在する。Mermaid~のサビの部分のコーラスなんで明らかに「ジャー」という歌声とは思えない音になっている。こういう表現だといわれればそれまでだが、これはいただけない。

ちなみに、ブログでも過去に何度か記事にしているけれど、こういった音の悪い録音物を自分で修正して治す方法もある。
試しにやってみたのは、まず歌入りとOff Vocalで引き算をして差分を取ってボーカルトラックのみを抽出。このトラックとOff Vocalトラックを使って、ミキシング作業をやり直すというもの。素材が一旦分かれることで潰された音圧や音質を聞きやすく取り戻すことができる。
抽出したボーカルはノイズ除去ツールで歪を取ってから、イコライザで周波数のピークを削り、音量の抑揚を部分部分で書きなおす。元の音が細いので広がり感を出すためにリバーブとコーラスを薄くかける。
オケのトラックは、聴き心地がよくなるようにEQを掛けた後、音量を細かく調整する。歌のある部分はオケを下げて音が喧嘩しないようにする。こうして素材を整えた上で再度ミキシングをすると、素人なりでも「なんとなく高音質な」ものに仕上げることが可能だ。

ラブライブのコピー


複雑だけど、やってることは「iPodで好みのイコライザをかけて聴く」の延長上みたいなものだよね。
制作側がこだわって完璧に仕上げた音楽作品が、ユーザー側にとって不満がある場合は、ユーザー自身が好きなように変更して聴けばいいのかな?



なんか、すっごい複雑な事になってしまったけど、一言でいえば「ハイレゾ配信くらい音圧戦争やめれ」というだけなんだけどね。


れこ×たて どんな音楽もグチャグチャにミキシングしちゃうレコーディングエンジニア V.S. どんなクソ音源もなんとか聴けるように修正するオーディオマニア とかやったら面白いかもねw



過去記事
邪王心眼で学ぶ自宅マスタリング術
Pure2のノイズで学ぶ現代のオーディオ修復技術

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No title

テレビの近くにケーブル通ったとかそういうことまで波形でわかるってのがカルチャーショックっす
(もっというとプロのマスタリングでその程度のミスが起こるということもショックだけど)
ハイレゾとかなんとか言う前にCDクオリティを突き詰めきれてないんじゃ仕方がないよなぁー

No title

コメント有難うございます。

微小な音の歪み、時間のズレ、ノイズなんてのは過去のアナログ録音の頃は当たり前に起きていたことで、こういった重箱の隅を突くような検証はどうかと思う反面、ハイレゾでなくともCDフォーマットでも微小な問題が再現性を持って収録されているということは、おっしゃる通り「ハイレゾする前にもっとやることあるんじゃないの?」という疑問を抱かせます。

「これは音が良いハイレゾ音源です!」→「劇的に音が良くなった!」なんて予定調和をしているほうがお金も回っていいですが、消費者が賢くならなければ本当に良い物は手に入らなくなってしまいます。

今回のハイレゾ配信は、普段は無頓着なソースの品質について考えさせられる良いキッカケになったのではと感じています。

No title

moraの春奈るなのハイレゾも同じようなもので、まったくハイレゾの意味が無いと言っていい、詐欺ハイレゾ音源でした。
ハイレゾなんて言葉をひとり歩きさせる前に、業界全体でラウドネスウォーをきっちり止めさせないと、意味ないですよね。

No title

こんにちは

ソニー・ミュージックさんもそうでしたか…。

今回、改めて色々聴き比べたり調べて分かったことも多いのですが、ミックス段階ですでに破綻していることを実感したのは衝撃的でした。

色々な業界で「偽装」により本来の中身以上の謳い文句で売り込む問題が明るみになっていますが、オーディオ業界でもしかりです。

ハイレゾ配信というのは、こういった音圧の問題から抜け出すための良いきっかけになるのではと期待をしています。

No title

検証お疲れ様です
私もランティスのハイレゾには懐疑的でしたがやっぱりダメでしたか…

ハイレゾと言ってもただ入れ物が大きくなるだけですからね…
CDですらだめなランティスでは無理なのでしょう

No title

コメントありがとうございます。

ハイレゾ音源が発展途中であるため制作者や購入者も知識やノウハウが追いつかない部分もありますが、良い音源が販売されるかどうかについては、まとめの記事にも書いたように結局は制作者の意識の問題だと思います。エヴァンゲリオンの鷺巣さんのコメントがあまりにも素晴らしく感じました。やはりこうでないとダメだなと。

ラブライブのサントラがあるのですがそれのマスタリングがシングルやベストと違っているという話を聞きました
シングル、アニメBD、PVBD、サントラ、ベスト、ハイレゾの全て音源がある「僕らのLIVE 君とのLIFE」で比較してくれませんか?

No title

ちゅんちゅん様

コメントありがとうございます。
ラブライブでは夏色えがおでハイレゾ、シングル、アルバムの比較までは他の記事でやりましたが、そちらの記事はご覧になりましたでしょうか?

正直なところ、これ以上ラブライブの破壊された音を聞きたくないと思っています。聴けば聴くほど悪い部分に気づいてしまい、ラブライブがどんどん嫌いになってしまいますし、ファンの方々はそういった記事を目にしたくはないでしょう。

比較しても、ハイレゾの程度が見えているので、良い結果に結びつくとは思えません。

意義のある検証なら是非行いたいのですが…。

ご返事ありがとうございます

確かにそこまでする意義があるのかと言われたら無いですね
ただサントラはどのようなマスタリングがなされているのか知りたいので簡単な比較をお願いします
曲もさっきは多くの音源があるという理由だけで「僕らの~」を挙げたのだけなので特に拘りがあるわけではございません

No title

サントラを持っていれば確認はすぐ出来るのですが、さすがに購入してまでは出来ません。すみません。

来年以降発売されたラブライブのCDでも引き続き音が悪いようであれば検証しますので、その時はお知らせいただけませんでしょうか。
よろしくお願いします。

曲全体でスペクトラムアナライザの平均を出すのはどうすればできますか?

対応したソフトをお使いください

対応したソフトを持っていないのでそれが使えるソフトを教えて欲しいです

No title

そういうことでしたか。

記事中で使用しているのはiZotope RXです。
当ブログの記事でも多用しているソフトで、解析や修正に便利ですのでぜひお使いになってみてください。

やはり有料化ですよね。便利そうなソフトですね。教えていただきありがとうございます。
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