デジタルオシロスコープを電子電圧計として使う

オーディオ機器の製作やトラブルシューティングを行うにあたり、デジタルオシロを持っているが、これの電圧表示機能で電子電圧計の代用ができないかという話題があったので、実際どのくらい使えそうなのかをチェックしてみることにしました。

近年のデジタルオシロスコープはかなり安価で入手できるようになり、波形を観る用途に加え、目盛を読むことなくピーク値やRMS値、平均値を数字で表示させることが可能です。

ちなみにデジタルのテスターでもある程度の交流電圧の測定が可能ではありますが、1kHzを超える周波数や100mVを下回る電圧では感度不足などにより十分な測定をすることができません。

デジタルオシロの場合は入力信号をAD変換してから波形表示をしているため、このデジタル変換された値を元に電圧値を算出することで、平均値から実効値を求めているような一般的な電子電圧計よりも正確な電圧値を得られる期待ができる反面、ADコンバータの分解能や、本来電圧を測る測定器ではないという点から測定値の確度に不安もあります。

というわけで、実際にアナログ信号の測定を行い、どの程度「使えるか」をチェックしてみることにします。


プローブを当てる前に、デジタルオシロでの電圧測定においてもう少し踏み込んで考えてみます。

■電圧の分解能について
手軽に入手できるデジタルオシロの分解能はレンジあたりせいぜい8bitです。すなわち画面上に最大で描いても255段階程度です。200Vの次の段階は201V。その程度だと考えられます。

■ノイズレベル
デジタルオシロの入力はそんなにSN比が良くありません。mVレンジだと信号を入れなくとも輝線が太くなります。この状態で信号を入れても当然線は太くなり、電圧を測ると線の太さの分だけ大きな値が表示されます。
しかし複数回トレースして、平均をとることでノイズ分を差し引き、線を細くするモードで電圧を測れば、より信号値のみの値に近くすることができます。

■精度はそんなに必要か
手持ちのデジタルオシロでは、表示される電圧値は3桁です。bit数から考えると有効桁数は3桁どころか2桁に踏み込んで来そうな感じです。
でも待った。「オシロで測った電圧じゃ精度が出ないよ」と簡単に言う前にちょっと考えてみましょう。
アナログテスタの精度はフルスケールで2.5%程度ですが、かつてはそれでも問題なく使っていました。
絶対的な確度についてはモデル毎や個体差について不安要素が残りますが、それは測定しやすい信号でデジタルテスタと照らしあわせてみることもできます。
どちらかというと必要な要素である、周波数と感度の関係についてはデジタルテスタを遥かに超える性能が期待できます。

なお、表示桁数ですが「これは3.14159265Vだ!」とか測定器の桁数自慢をする前によく考えてください。
下位桁まで正確に測定をするためには、測定器のスペックだけでなく測定環境についても十分に目を配る必要があります。

例えばインピーダンス600Ω出力のオシレーター(もしくは被測定回路)に1MΩ受けのオシロを接続すると、開放では1Vジャストのはずの信号電圧が1000000/1000600で0.99940036Vになります。
これをうっかり「999.4mVだけど、0.6mV足りないなあ」なんてやってたら間違いですし、無駄に多い桁数に踊らされるだけになってしまいます。

そういえばオシロスコープのプローブで×1の時は直結だとばかり思っていたのですが、直流抵抗で物により数百Ωくらいあったりします。200kΩ受けのオーディオアナライザにオシロのプローブつけて測っていて、「何かおかしいな」と思って調べたら、そんなこともありました。

そんなこんなで、一般的なオーディオ機器の製作や故障診断であれば、デジタルオシロによる電圧測定でも十分な値が得られるのではないかと思えます。

前置きが長くなりましたが、実際に測定した値を載せていきます。


■997Hz 1.228V サイン波
1_228v.jpg
オシレータで出力した信号をUSBオシロスコープSDS200Aで観測した波形です。
四捨五入された程度の正しい実効値電圧が表示されていることが確認できます。
当初1kHz 1Vで試みたのですが、表示される際に桁数が削られて確度が判断できないのであえて端数にしました。
なお、元の信号レベルの確度はこれを十分に上回っているはずですが…それはご容赦ください。


■997Hz 12.28mV サイン波
_36dB.jpg
今度は信号レベルを1/100に落としてのテストです。
SN比の問題で輝線が太くなってしまったためAverageを100に設定したところ、1.228Vの時と同様な細い線となりました。心配していた低い電圧の測定ですが、Average機能を用いることで問題回避することができました。



さて続いては、実際に周波数特性を測って、アナライザで測った電圧比と比較してみます。
測定対象として選んだのは、秋月のUSBオーディオDAコンバーターキットです。
PCM2704のデータシートによると出力は0dBFs信号時に641.8mVrms。許容誤差の最大幅だと500mV~700mVくらいになる可能性もありますが、いままで見た限りでは概ね640mV程度に収まっているようです。

設定ミスなどによる間違いを防ぐためにASIO4ALLを用い、Wavegeneで44.1kHz 16bit 0dBFsの信号を出力。ライン出力の電圧レベルを観測します。なお、PCM2704の出力インピーダンスは0に近いので負荷インピーダンスによる電圧降下は無視します。

オシロで電圧測定

周波数特性

20Hz近辺でグラフがクロスしていますが、これはデジタルオシロの分解能が10mVのため一気に変化しているためです。
オシロでの測定値は、おおむねアナライザでの測定値を四捨五入した値となっており分解能の限界を除いては問題がないといえるでしょう。
ちなみに630mVと640mVの差は0.14dB程となります。これ以上の分解能が必要となる場合は電子電圧計が必要ということになります。


実は、実験をしていた時に「オシロのほうが良い」ことがひとつありました。それは10Hzを下回る低周波の測定です。
カップリングをDCにしないとレベル低下が起きてしまうのはオシロスコープでもオーディオアナライザでも一緒ですが、ここまで低い周波数となった場合にアナライザでは外部信号に対してうまくトリガがかからず、計測値が暴れてしまうため例えば4Hzなら計測間隔を0.25秒などと設定する必要がありました。しかしこれでも正確に同期しているわけではありません。そもそも針式のメーターでも針を止めて読むことは無理な周波数です。

にもかかわらず、オシロなら簡単にトリガがかかり、安定した値を読むことができました。こういった低周波信号の電圧測定が安定してできることはオシロスコープのメリットだと実感しました。



以上、実験してみると「思ったより使える」という結果だと思うのですが、いかがでしたでしょうか?

今回はリファレンスとして、どこの家庭にもある「秋月USBDAC」を基準として使いましたので、皆様もぜひデジタルテスタや他のオシロ、電子電圧計など、さまざまな測定器で出力レベルを測ってみてください。
ご報告をお待ちしております。
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No title

ご自宅への引越し、お疲れ様でした。
私はオシロや測定知識も有りませんが、参考になります。

No title

こんにちは。

まあ、きっかけは何であれ気になったことは調べてデータを残して置くのは自分のためにも大切だと思っています。
掲示板でやった内容って、後々検索するのも大変なんですよ。
自分用に加え、こうやって見てくださる方の参考になれば記録した意義もあるってものです。

デジタルオシロで電圧確認は使えるって感覚はあります。

接続については注意が必要です。


ノイズメーターについても-60dB以下程度からは測りたい信号に対して帯域制限をしたりする必要があると思います。

No title

物にもよるのかもしれないですが、普段そこまでズレてるという印象は無かったので普通に使ってました。
こうやって調べてみると、分解能こそ限界があるものの、表示桁数に見合った精度はあるようで。

ノイズレベルや微小電圧になるとそれはそれで今度は「ノイズなのか信号なのか」を把握した上でやらないといけなくなりますね。確かに。
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