アイドルマスターのハイレゾ

ラブライブに対してだいぶ遅れを取っていたアイドルマスターのハイレゾがついに配信開始となりました。

アイマスのハイレゾについては2014年末の記事で

「歌モノも、いずれハイレゾ用にマスタリングした上で出すかもしれません。ただ、どういう形でファンにお届けするのがベストなのかは簡単には決まらないと考えています。」

とされていましたが、2年経過してようやく方向性が定まり、準備が整ったようです。

参考記事
<特別インタビュー>“音”から見るアイドルマスターの新たな魅力 - Phile-web


今回配信開始された各音源のデータについてはここのブログ
(アイドルマスターのハイレゾ音源のレビュー - 飴玉工房)

で詳しく公開されているので、私のほうでは試しに1曲買ってざっくり調べていきたいと思います。


購入したのはシンデレラガールズのTulip (M@STER VERSION)です。
今回の配信では楽曲によって日本コロムビアのものとランティスのものがありますが、デレマス曲については日本コロムビアとなっています。


波形やスペクトル分布はこんな感じです。
tulip3.png


tulip4.png


tulip5.png



これをざっと見て気になるところは、楽曲自体はマキシマイザーを掛けた、いわゆる海苔波形になっているわけですが、最大記録レベルの0dBFSまで振れることなく3dBものマージンが空いているというところです。

せっかく音圧を上げたのに全体のレベルを下げて入れている理由として考えられるのは、この楽曲のミキシングの段階ですでにマキシマイザーを掛けてしまっていて、信号のピーク成分を失ったマスターになってしまっていた。これに対し他の楽曲については(改心して)マキシマイザーを使うのをやめたため、これらの楽曲を並べて聴いた時に音量が揃わなくなってしまった。そこで音圧を上げてしまった楽曲のみレベルを下げて収録することにしたのではないかとみられます。

本来であれば、この空いているマージン部分にピーク成分を残すことができたはずですが、仕方なくこれが切られてしまっている状態となります。


このへんの話については以下の記事が参考になります。
ダイナミック・レンジとメータの話Studio Gyokimae
収録レベルの話Studio Gyokimae



さて、楽曲Tulipについては完成したマスター音源がすでに潰れてしまっているので仕方ないという判断になるわけですが、ゲーム内で使われている音源についてはどうなのでしょうか?

一般的にはCDやハイレゾでリリースされる音源と、テレビやゲーム内で使用される音源は同じ楽曲であっても別のミックスだったりするようです。

実は、CDでは音圧上げた海苔波形にするのが一般的になってしまっているのに対し、映像作品に使う音源なんかは海苔にしないのが普通だったりします。これは海苔波形にしてしまうとBGMやナレーションと綺麗に混ざらなくなり、素材としては使いにくいものとなってしまうという理由もあったりします。

というわけで、iOS版のデレステで再生される同楽曲の音源をPCに録音して比較してみることにしました。

tulip8.png


するとどうでしょう。ハイレゾ音源よりもゲーム内で再生される音源のほうがダイナミックレンジが広く、過剰に音が詰められていない音源であるようです。

tulip7.png


イントロの部分を拡大してみるとハイレゾ版では、音数が少ないイントロの初っ端からピークレベルが揃ってしまうほどマキシマイザが掛かっているようにみられます。一方、ゲーム実機の音源ではイントロではおとなしく、楽曲が盛り上がっていくにつれて録音レベルも上がっているのがわかります。

う~ん、CDなんかで音圧が上げられているのは本来、劣悪な再生装置や聴取環境であってもそれなりに楽曲が聞き取れるようにといわれているはずでしたが、ハイレゾ音源より、iPhoneで再生されるようなゲーム内音源のほうがレンジが広いというのは一体どういったことなのでしょうか!?

あとは実際に曲を聴いてみれば良いのですが、
周波数領域についてはハイレゾのほうが高音まで十分に出ていて良いけれど、楽曲の抑揚についてはゲームの音源のほうがリズムのメリハリがあって、音楽にのって楽しく聴こえるような感じがしませんでしょうか?

ちなみになんですが、この話をツイッターに書いた時、デレステ楽曲についてはCDより実機のほうが音質良いよなんて複数の人から聞いたので、実際にそういったことを感じている人は以前より居たようです。

このあたりはぜひ各自聴いて判断()してみてください。


まあ、毎度ながら辛口なレビューとなりましたが、このようにマージンを残した海苔波形音源がリリースされたということは、コロムビアが今後、ハイレゾ作品においては脱音圧競争をしていこうという意図とも読み取れるため、好ましい方向に向かっているともいえるのではないでしょうか?

きっと何年か先になって各社が過去に2mixでマキシマイザ掛けちゃったことを後悔する日がやってくるんじゃないかと思います。



※コロムビアのサイトに収録レベルについての但し書きがありました。

ハイレゾ用としてダイナミックレンジを広くとっておりますので、
通常のCDを聴かれる時と比べてボリュームを大きめにしてお聴きください。
アイドルマスター(THE IDOLM@STER)公式ページ|日本コロムビア|2017.02.24 News

ちなみに今回配信されたアイドルマスター作品でもランティス扱いのものは相変わらずだったらしいですよ!


音量の件については、CD音源と並べて再生したときに音量小さくて困る、なぜそうしたんだという不満をtwitterでもちらほら見かけました。
これちょっと説明が不親切だと思うんですよ。一般の人に専門用語を突きつけてもわかるわけがないので、単純に「音質を優先したため収録音量が小さくなっています」とか書けばいいのになと思いますね。

もう少し説明すると、そもそもCDの音量の大きさが異常なのです。
これはCDにおいて基準となる記録音量が定められておらず、その結果、各レコード会社がとにかく自社の曲を大きく聴こえるように録音しようと競った結果、音を大きくすることばかり優先してしまい、音質が犠牲になったのです。
では、ハイレゾ音源をリリースする時も音質を犠牲にしてCDと同じ音量にしますか? となれば理解が得られるのではないでしょうか。
もしどうしても不便だということであれば、プレーヤについている曲ごとの音量を自動で揃える機能を使ってはいかがでしょう。




関連ツイートのまとめ
「アイドルマスターのハイレゾ音源」(作成者: @fixerhpa)
https://twitter.com/i/moments/835064872744333312



スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

ずいぶん前だったでしょうか?記憶が曖昧ですが、AESだかでマスタリングは-3dB以下に抑えたほうが良いとの発表があった気がしました。

私の理解では、民生機でまともに0dBFsを再生できていない。という発表で、矩形波で+6dBFs相当のオーバーシュートが起きる事もあるとか何とか。

まぁミックスの問題って推理が当たりなんでしょうけど。

No title

こんにちは。
AESのはおそらくこの話だと思います。twitterあたりでもしばしばこのネタは出しています。
jp.music-group.com/TCE/Tech/0dbf_D-Mastering_JPN.pdf

あと、Mastered for iTunesの資料が参考になりますよ。
http://images.apple.com/jp/itunes/mastered-for-itunes/docs/mastered_for_itunes-jp.pdf

エンジニアの名乗るのなら正しくPCM記録をした音源をリリースしてもらいたいものです。

No title

書き忘れましたが、リンク先にある同時にリリースされた楽曲をみると必ずしも-3dBFSに抑えてあるわけではないようです。

よって、今回の音源の3dBマージンはインターサンプルピークの問題というよりはラウドネスレベルを揃えるためと考えたほうが妥当ではないかと思います。

No title

こんにちは。

以前ラブライブのハイレゾについての記事をお見かけしたので、今回も何か書かれているのではと思いブログを見たところやはり書かれていて安心しました(笑)。

アイマス待望のハイレゾ音源ということで、私もいくつか購入してCDやBDオーディオ(ステレオ)と比較してみました。

ここ2~3年くらいの音源は音圧が高くダイナミックレンジが比較的狭く、ORTで48kHzから96kHzまで拡張してあるような少し古い音源ではかなりダイナミックレンジが広くとられているようです。

波形をスクショしたのでURLを張っておきます。
READY!!
CD
https://www.dropbox.com/s/ejfelas7zmn20cu/READY%21%21_CD.png?dl=0
BDオーディオ
https://www.dropbox.com/s/hw7rhcb99a5mpmo/READY%21%21_BD.png?dl=0
ハイレゾ
https://www.dropbox.com/s/nuxiuq4n6b39di8/READY%21%21_hires.png?dl=0

比べてみると、CD>BD>ハイレゾの順に音圧が高く、CDは少しチープな感じで、BDオーディオでは若干リバーブが強くかかった感じがしました。ハイレゾは他と比べてかなり聴きやすくなり、楽器の質感も向上したように感じました。

あんずのうた
CD
https://www.dropbox.com/s/j7psyz50yyh0x9z/%E3%81%82%E3%82%93%E3%81%9A%E3%81%AE%E3%81%86%E3%81%9F_CD.png?dl=0
ハイレゾ
https://www.dropbox.com/s/fen3awrzkdeasr0/%E3%81%82%E3%82%93%E3%81%9A%E3%81%AE%E3%81%86%E3%81%9F_hires.png?dl=0

これもハイレゾの方がすっきりして質感(特に低域)も向上しているように聞こえました。


他に、とどけアイドルについては、ハイレゾとBDオーディオのダイナミックレンジは大体同じ(ハイレゾの方が少し広い)くらいですが、ハイレゾの方が派手な印象を受けました。


ついでに、ラブライブの音質についてですが、色々比較したところ、初回限定盤のCDについてくるPVのBDに入っている音源が一番まともな音質だと思います。

記事でデレステの音源について指摘がありますが、私もアイマスやラブライブ以外についても、映像用の音源の方が実はよいのではと思うことが度々あります。

長々と書いてしまいましたが、何か参考になればと思います。また、アイマスのハイレゾ音源が増えてきたころに記事を書いていただけると嬉しいです。
プロフィール

fixer

Author:fixer
http://fixerhpa.web.fc2.com/
Twitter @fixerhpa
頒布中のバランスキット関連はこちら

最新記事
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

検索フォーム
最新コメント
カテゴリ
RSSリンクの表示
リンク