
太陽光スペクトルと演色性と見た目の違和感
LED照明がコンビニ等に導入され始めた頃より、色味がオレンジっぽかったり緑っぽかったりと、どうも今までの電球や蛍光灯に比べて美しく見えない、食べ物が美味しそうに見えないと感じたことがある人は少なくないはずです。
LEDの照明器具が登場したのは、青色LEDの技術によって白色の明かりを作ることが可能になったことがきっかけで、昨今では多くの照明器具がLEDに切り替わりつつあり、旧来の電球や蛍光灯を見かけることは少なくなりました。
LED照明も年々改良されて高効率化(電気代の節約)、高演色化(色味の改善)がされていますが、この2つの要素は相反する部分があります。高効率化を優先すると、演色性を失ってしまうことになり、どうしても色味については二の次になってしまっていることが多いようです。
■演色性の悪い照明で、料理が美味しくなさそうに見える例
(国際放送機器展 InterBEEのロケ弁グランプリのコーナーにて撮影)

このように、映像に関する展示会であっても、照明の演色性に関しては無頓着でも許容されているのが現状です。
写真や映像の撮影、デザインや塗装、印刷物の色校正などの分野ではかねてより正確な色再現性が求められており、色評価用の蛍光灯や、演色AAAといった高演色の照明が用いられてきました。しかし近年では蛍光灯の入手が難しくなりLEDになりつつあるようですが、十分な性能が得られる器具はごく限られた上に、高価なものとなり移行が難航している部分もあります。
参考
エコリカLED 高演色LED
https://www.ecorica.jp/led/highcolor/
前置きが長くなりましたが、2020年7月にコイズミ照明株式会社よりこんな製品が発売されました。
https://www.koizumi-lt.co.jp/product/jyutaku/sunceiling/
「自然光に近い光の太陽光スペクトルLEDシーリング」
「室内にいながら青空の下で見るような、自然光に近い本来の色Ra97を再現したシーリング。」
とのことで、実売価格1万円程度にもかかわらずこれだけの演色性を得られることに大きな魅力を感じ、早速購入してみることにしました。
色温度も5000Kと、色評価用蛍光灯と同じでちょうどよい値です。
ラインナップはAH51221(6畳用)、AH51220(8畳用)、AH51219(10畳用)の3種類のうち、8畳用を選択しました。
この照明について、楢ノ木技研のUSBスペクトロメーター ezSpectra 815Vでチェックしてみたところ、以下のデータとなりました。


Ra(平均演色評価数)は98、LED照明では出にくいとされ、赤色の表現には重要とされる「R9」の値も80を超えており、測定上ではとても優秀な照明のようにみえます。
が、ここからが本題です。
演色性としては優秀なのに、部屋の照明をこの製品に交換してから、どうも照明の色や部屋においてある物が緑っぽく感じられるのです。
部屋の明かりをつけるたびに「あれ、緑っぽいな」と感じるのです。まあ、蛍光灯などでも器具を交換した直後は目の慣れの問題で違和感を覚えることがあるのはご存知の通りですが、今回は数日使ってもどうも慣れることが出来ず、結局もともと使っていたNECの調光調色のLEDシーリングライトに戻してしまいました。twitterで他の方の意見も聞いたのですが、確かに緑っぽく感じる要素があるようです。
数値は優秀なのに見た目で馴染めないというのは経験としては初めてであり、果たしてこの照明に慣れて良いのか、それとも自分の目を信じて数値より見た目が良い照明を選んだら良いのか答えが出せず、悩んでいます。
詳しい方々に聞いてみたところ、どうやら色度図において色度が黒体軌跡上になく、緑寄りにずれている(⊿uvが+領域にある)ことや、緑色の波長の成分が赤と同じくらい盛り上がってピークがある部分に問題があるのではという意見がありました。確かにこの2点については太陽光とは違う性質だといえる部分です。

データ上のこれだけの差が、体感上の緑っぽさの度合いと一致しているのかは不明ですが、少なからずこの照明には緑っぽさがあるといえるようです。
なお、緑色に見える原因は何かとメーカーに質問したところ、このLEDには緑色の蛍光体が使用されているからではないかとのことでした。しかしながら、どんな蛍光体を使用していても太陽光のスペクトルと同じであれば緑には見えないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
ひょっとすると「太陽光スペクトルLED」という言葉が、「太陽光のスペクトル分布と同じ」という意味ではなくて、「太陽光の平均演色評価数(Ra100)に近い」という意味なのかもしれません。
演色性の数値は良いのに、どうも見た目に違和感がある照明について、まだまだ知識や経験が追いつきません。ひきつづき調べてみますが、もし詳しい方がおられましたらご意見いただけますと有り難いです。
ちなみに、現段階において数値抜きに一般家庭で違和感なく使用できて安価でおすすめの製品はNEC(ホタルクス)の調光調色タイプのモデルがいち推しです。
NEC LEDシーリングライト 調色/調光タイプ~8畳 HLDC08208
参考リンク
本件についての詳細(twitterにて)
スペクトロメーターを使った色々な照明器具の測定結果(twitterにて)
LEDの照明器具が登場したのは、青色LEDの技術によって白色の明かりを作ることが可能になったことがきっかけで、昨今では多くの照明器具がLEDに切り替わりつつあり、旧来の電球や蛍光灯を見かけることは少なくなりました。
LED照明も年々改良されて高効率化(電気代の節約)、高演色化(色味の改善)がされていますが、この2つの要素は相反する部分があります。高効率化を優先すると、演色性を失ってしまうことになり、どうしても色味については二の次になってしまっていることが多いようです。
■演色性の悪い照明で、料理が美味しくなさそうに見える例
(国際放送機器展 InterBEEのロケ弁グランプリのコーナーにて撮影)

このように、映像に関する展示会であっても、照明の演色性に関しては無頓着でも許容されているのが現状です。
写真や映像の撮影、デザインや塗装、印刷物の色校正などの分野ではかねてより正確な色再現性が求められており、色評価用の蛍光灯や、演色AAAといった高演色の照明が用いられてきました。しかし近年では蛍光灯の入手が難しくなりLEDになりつつあるようですが、十分な性能が得られる器具はごく限られた上に、高価なものとなり移行が難航している部分もあります。
参考
エコリカLED 高演色LED
https://www.ecorica.jp/led/highcolor/
前置きが長くなりましたが、2020年7月にコイズミ照明株式会社よりこんな製品が発売されました。
https://www.koizumi-lt.co.jp/product/jyutaku/sunceiling/
「自然光に近い光の太陽光スペクトルLEDシーリング」
「室内にいながら青空の下で見るような、自然光に近い本来の色Ra97を再現したシーリング。」
とのことで、実売価格1万円程度にもかかわらずこれだけの演色性を得られることに大きな魅力を感じ、早速購入してみることにしました。
色温度も5000Kと、色評価用蛍光灯と同じでちょうどよい値です。
ラインナップはAH51221(6畳用)、AH51220(8畳用)、AH51219(10畳用)の3種類のうち、8畳用を選択しました。
この照明について、楢ノ木技研のUSBスペクトロメーター ezSpectra 815Vでチェックしてみたところ、以下のデータとなりました。


Ra(平均演色評価数)は98、LED照明では出にくいとされ、赤色の表現には重要とされる「R9」の値も80を超えており、測定上ではとても優秀な照明のようにみえます。
が、ここからが本題です。
演色性としては優秀なのに、部屋の照明をこの製品に交換してから、どうも照明の色や部屋においてある物が緑っぽく感じられるのです。
部屋の明かりをつけるたびに「あれ、緑っぽいな」と感じるのです。まあ、蛍光灯などでも器具を交換した直後は目の慣れの問題で違和感を覚えることがあるのはご存知の通りですが、今回は数日使ってもどうも慣れることが出来ず、結局もともと使っていたNECの調光調色のLEDシーリングライトに戻してしまいました。twitterで他の方の意見も聞いたのですが、確かに緑っぽく感じる要素があるようです。
数値は優秀なのに見た目で馴染めないというのは経験としては初めてであり、果たしてこの照明に慣れて良いのか、それとも自分の目を信じて数値より見た目が良い照明を選んだら良いのか答えが出せず、悩んでいます。
詳しい方々に聞いてみたところ、どうやら色度図において色度が黒体軌跡上になく、緑寄りにずれている(⊿uvが+領域にある)ことや、緑色の波長の成分が赤と同じくらい盛り上がってピークがある部分に問題があるのではという意見がありました。確かにこの2点については太陽光とは違う性質だといえる部分です。

データ上のこれだけの差が、体感上の緑っぽさの度合いと一致しているのかは不明ですが、少なからずこの照明には緑っぽさがあるといえるようです。
なお、緑色に見える原因は何かとメーカーに質問したところ、このLEDには緑色の蛍光体が使用されているからではないかとのことでした。しかしながら、どんな蛍光体を使用していても太陽光のスペクトルと同じであれば緑には見えないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
ひょっとすると「太陽光スペクトルLED」という言葉が、「太陽光のスペクトル分布と同じ」という意味ではなくて、「太陽光の平均演色評価数(Ra100)に近い」という意味なのかもしれません。
演色性の数値は良いのに、どうも見た目に違和感がある照明について、まだまだ知識や経験が追いつきません。ひきつづき調べてみますが、もし詳しい方がおられましたらご意見いただけますと有り難いです。
ちなみに、現段階において数値抜きに一般家庭で違和感なく使用できて安価でおすすめの製品はNEC(ホタルクス)の調光調色タイプのモデルがいち推しです。
NEC LEDシーリングライト 調色/調光タイプ~8畳 HLDC08208
参考リンク
本件についての詳細(twitterにて)
スペクトロメーターを使った色々な照明器具の測定結果(twitterにて)
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