
「dB」について
最近、「dB」に関するデタラメな記事やわかりにくい記事が多く出回っており、著名人が称賛するかのごとくRTするような場面も見受けられ、音楽に関係する人たちの混乱を招くことを懸念したため、「dB」について書いてみようかなと思います。
おかしかったりわかりにくい記事の例
dB (デシベル) という単位について NK Productions
作曲者のためのエンジニアさんにステムデータ・パラデータを渡すときの仕様覚え書き MoppySound
なお、最小限の文章量で書くので細かいことは目をつぶってください!
■dBについて
「dB」とは、音声レベルが「とある基準値」から何倍になっているかを示す単位です。
まずは下記の例を元に感覚で理解してください。
例:
+6dB
→レベルが2倍になった
-6dB
→レベルが半分(1/2倍)になった
20dB上がった
→レベルが10倍になった
0dB
→1倍、つまり変わってない
0dBV
→0dBVは1Vのこと
+4dBu
→0dBu (0.775Vのこと)に対して4dB高いもののこと(1.228V)
0dBFS
→DAWのピークメーターが最大まで振ってギリギリ歪まない状態
-20dBFS
→0dBFSより20dB低く(1/10)、ピークメーターが-20まで振っている状態
dBと倍率の関係は単純な計算では出ないので、キリの良い値は暗記して、それ以外は下記サイトで変換してください。
dB conversion
暗記しておく範囲
6dB(2倍)、20dB(10倍)、-6dB(1/2倍)、-20dB(1/10倍)
組み合わせは計算する
12dB(6dB+6dBだから4倍)
32dB(6dB+6dB+20dBだから40倍)
40dB(20dB+20dBだから100倍)
-40dB(-20dB-20dBだから1/100倍)
※ただし! DAWで音楽作るくらいの場合、dBの値を実際の電圧や倍率に変更する計算が必要になることは、まずありません!!(つまりスルー可)
で、なんで音声レベルを何故わざわざdBで表記したりするのかという理由ですが、これは電圧レベルが大きく変わっても人間には小さな音量差にしか感じられない現象があるため。
例えばレベルメーターをリニアスケール(電圧目盛り)にすると、メーターが全開に振っている状態のとき、少し音量下げただけでメーターが殆ど振らなくなってメーターとして役に立ちません。
また、フェーダーをリニアスケールにすると、大きく動かした割には音量が殆ど変わらなくなり、扱いにくくなります。
よって、音量の感覚に近くするためにdBを用いて表記しています。
■DAW上でのVUメーターの基準レベルについて
VUメーターはもともとアナログのラインレベルの回線に接続して使うために規定されており、1kHz +4dBu(0dBuは0.775Vで、それの+4dBだから1.584倍で1.228V)の信号を入れたときに0VUを示すようになっています。当初はアナログ機材しかない時代から始まり、その後デジタルレコーダーが導入されました。
その時、アナログの信号をA/Dコンバーターに入れてデジタル信号に変換したり、その逆でアナログに戻す時に、アナログ(dBu)の信号をデジタルの信号(dBFS)のいくつにするか決める必要があります。
VUメーターは音量のメーターなので、デジタル録音の管理に必要なピークレベルはわかりません。
そこでVUメーターを常識的に振らせて音源を作った時に、レベルオーバーすることなくデジタル録音できるような関係を、理論ではなく実経験を元に決定する必要が出てきました。
放送、音楽、国ごとによって基準レベルの規格は異なりますが、主なものは0VU(+4dBu)を-20dBFSにするものや、-18dBFSにするものが一般的で、特殊な例としては日本の音楽スタジオにおいて0VUを-16dBFSとするものもあります。(JAPRS推奨)
放送においては送出や納品するときにこの基準をきちんと守る必要がありますが、音楽の場合はわりとアバウトです。
-16dBFS=0VUはマルチレコーダーのレベルの目安とはなるものの、それ以外で、例えばマスタリングで音圧を入れた音源をVUメーターをなんとなく振らせて確認するような用途では基準レベルを-10dBFSとか-8dBFSとか自由に設定しているようです。
ちなみに、VUメーターの目盛りはdBではなくVUとなっており、例えば+3VUなどと呼んだりもしますが、目盛り自体はdBと同一です。+3VUは0VUに対して3dB高いといえます。+4dBu=0VUのとき、+7dBuを入れると+3VUを示します。
DAW上のプラグインでのVUメーターの場合は一度もアナログ信号になることはありませんが、上記の流れを汲んでレベル設定をします。VUメーターの基準(0VU)を -20dBFSや-18dBFS、-16dBFS、そして時には-8dBFSに設定すると一般的な収録レベルの基準にあわせて録音やミックスをすることができるといえます。
なお、参考までにラウドネスメーターの場合はというと、例えば-24LUFSというのはサイン波1kHzで-24dBFSの信号を出した時に-24LUFSを示すようになっています。-24LUFSは放送の基準ですが、YouTubeの場合は-14LUFSとなっており、10dB高い基準です。
YouTube用の-14LUFSの音源素材をフェーダーで10dB下げると-24LUFSの放送基準の値になります。
■機材の出力レベルについて
「業務用機材のリファレンス電圧が +20 dBu である場合が多いため、-16 dBFS が丁度 +4 dBu になる」という記事がありましたが、これは間違いです。+20dBuは最大レベルでありリファレンス電圧ではありませんし、-16dBFSがちょうど+4dBuになるわけでもありません。
デジタル機材は初期より最大レベル+24dBuが確保されています。近年では安価で簡易的な半分業務用機材みたいなものが多くありますが、この場合は電源回路の簡略化などの理由により+24dBuまで扱えないものもあります。主にXLRではなくTRSで入出力するような機材が該当します。ただし、出力レベルが大きい程高性能になるわけではありません。しかしながら+24dBuまでの振幅を扱えないと、業務用機材として支障が出る場合はありますので注意してください。-20dBFS=+4dBu(0VU)の放送用途で最大レベル+20dBuの機材を使うと、wav音源は正しくても、必要なアナログ信号レベルが得られません。また、本来レベルオーバーとならないはずのアナログ信号を入れても歪む等の問題が発生します。
また、仕様書に「最大レベル+24dBu」と書かれたものと、「+4dBu(-20dBFS時)」と書かれたものは仕様としては同一です。大抵どちらかの表記となっていますが、中には「出力レベル +4dBu」と記載が不完全で仕様がわからないものがあります。こういったものの中には「0dBFSが+4dBu」の機材もあり、これでは民生機より低いレベルとなってしまいます。記載に不備がある場合は必ず購入前にメーカーに確認しましょう。これで痛い目にあう現場を見ています。
いかがでしたでしょうか?
プロのエンジニアでも理解していないというdBuやdBFS。巷のブログで勉強しようにもデタラメばかり。まあ本当は本を買ったりして勉強しないといけないところなのですが、今回は間違った情報が出回ることを危惧してちょっとだけ書いてみました。
とりあえず適当に書きなぐったので、何か疑問点などあれば都度書き足します。
関連資料
音の基準レベルについて 音響・映像・電気設備が好き
-20dBFSについて 音響・映像・電気設備が好き
おかしかったりわかりにくい記事の例
dB (デシベル) という単位について NK Productions
作曲者のためのエンジニアさんにステムデータ・パラデータを渡すときの仕様覚え書き MoppySound
なお、最小限の文章量で書くので細かいことは目をつぶってください!
■dBについて
「dB」とは、音声レベルが「とある基準値」から何倍になっているかを示す単位です。
まずは下記の例を元に感覚で理解してください。
例:
+6dB
→レベルが2倍になった
-6dB
→レベルが半分(1/2倍)になった
20dB上がった
→レベルが10倍になった
0dB
→1倍、つまり変わってない
0dBV
→0dBVは1Vのこと
+4dBu
→0dBu (0.775Vのこと)に対して4dB高いもののこと(1.228V)
0dBFS
→DAWのピークメーターが最大まで振ってギリギリ歪まない状態
-20dBFS
→0dBFSより20dB低く(1/10)、ピークメーターが-20まで振っている状態
dBと倍率の関係は単純な計算では出ないので、キリの良い値は暗記して、それ以外は下記サイトで変換してください。
dB conversion
暗記しておく範囲
6dB(2倍)、20dB(10倍)、-6dB(1/2倍)、-20dB(1/10倍)
組み合わせは計算する
12dB(6dB+6dBだから4倍)
32dB(6dB+6dB+20dBだから40倍)
40dB(20dB+20dBだから100倍)
-40dB(-20dB-20dBだから1/100倍)
※ただし! DAWで音楽作るくらいの場合、dBの値を実際の電圧や倍率に変更する計算が必要になることは、まずありません!!(つまりスルー可)
で、なんで音声レベルを何故わざわざdBで表記したりするのかという理由ですが、これは電圧レベルが大きく変わっても人間には小さな音量差にしか感じられない現象があるため。
例えばレベルメーターをリニアスケール(電圧目盛り)にすると、メーターが全開に振っている状態のとき、少し音量下げただけでメーターが殆ど振らなくなってメーターとして役に立ちません。
また、フェーダーをリニアスケールにすると、大きく動かした割には音量が殆ど変わらなくなり、扱いにくくなります。
よって、音量の感覚に近くするためにdBを用いて表記しています。
■DAW上でのVUメーターの基準レベルについて
VUメーターはもともとアナログのラインレベルの回線に接続して使うために規定されており、1kHz +4dBu(0dBuは0.775Vで、それの+4dBだから1.584倍で1.228V)の信号を入れたときに0VUを示すようになっています。当初はアナログ機材しかない時代から始まり、その後デジタルレコーダーが導入されました。
その時、アナログの信号をA/Dコンバーターに入れてデジタル信号に変換したり、その逆でアナログに戻す時に、アナログ(dBu)の信号をデジタルの信号(dBFS)のいくつにするか決める必要があります。
VUメーターは音量のメーターなので、デジタル録音の管理に必要なピークレベルはわかりません。
そこでVUメーターを常識的に振らせて音源を作った時に、レベルオーバーすることなくデジタル録音できるような関係を、理論ではなく実経験を元に決定する必要が出てきました。
放送、音楽、国ごとによって基準レベルの規格は異なりますが、主なものは0VU(+4dBu)を-20dBFSにするものや、-18dBFSにするものが一般的で、特殊な例としては日本の音楽スタジオにおいて0VUを-16dBFSとするものもあります。(JAPRS推奨)
放送においては送出や納品するときにこの基準をきちんと守る必要がありますが、音楽の場合はわりとアバウトです。
-16dBFS=0VUはマルチレコーダーのレベルの目安とはなるものの、それ以外で、例えばマスタリングで音圧を入れた音源をVUメーターをなんとなく振らせて確認するような用途では基準レベルを-10dBFSとか-8dBFSとか自由に設定しているようです。
ちなみに、VUメーターの目盛りはdBではなくVUとなっており、例えば+3VUなどと呼んだりもしますが、目盛り自体はdBと同一です。+3VUは0VUに対して3dB高いといえます。+4dBu=0VUのとき、+7dBuを入れると+3VUを示します。
DAW上のプラグインでのVUメーターの場合は一度もアナログ信号になることはありませんが、上記の流れを汲んでレベル設定をします。VUメーターの基準(0VU)を -20dBFSや-18dBFS、-16dBFS、そして時には-8dBFSに設定すると一般的な収録レベルの基準にあわせて録音やミックスをすることができるといえます。
なお、参考までにラウドネスメーターの場合はというと、例えば-24LUFSというのはサイン波1kHzで-24dBFSの信号を出した時に-24LUFSを示すようになっています。-24LUFSは放送の基準ですが、YouTubeの場合は-14LUFSとなっており、10dB高い基準です。
YouTube用の-14LUFSの音源素材をフェーダーで10dB下げると-24LUFSの放送基準の値になります。
■機材の出力レベルについて
「業務用機材のリファレンス電圧が +20 dBu である場合が多いため、-16 dBFS が丁度 +4 dBu になる」という記事がありましたが、これは間違いです。+20dBuは最大レベルでありリファレンス電圧ではありませんし、-16dBFSがちょうど+4dBuになるわけでもありません。
デジタル機材は初期より最大レベル+24dBuが確保されています。近年では安価で簡易的な半分業務用機材みたいなものが多くありますが、この場合は電源回路の簡略化などの理由により+24dBuまで扱えないものもあります。主にXLRではなくTRSで入出力するような機材が該当します。ただし、出力レベルが大きい程高性能になるわけではありません。しかしながら+24dBuまでの振幅を扱えないと、業務用機材として支障が出る場合はありますので注意してください。-20dBFS=+4dBu(0VU)の放送用途で最大レベル+20dBuの機材を使うと、wav音源は正しくても、必要なアナログ信号レベルが得られません。また、本来レベルオーバーとならないはずのアナログ信号を入れても歪む等の問題が発生します。
また、仕様書に「最大レベル+24dBu」と書かれたものと、「+4dBu(-20dBFS時)」と書かれたものは仕様としては同一です。大抵どちらかの表記となっていますが、中には「出力レベル +4dBu」と記載が不完全で仕様がわからないものがあります。こういったものの中には「0dBFSが+4dBu」の機材もあり、これでは民生機より低いレベルとなってしまいます。記載に不備がある場合は必ず購入前にメーカーに確認しましょう。これで痛い目にあう現場を見ています。
いかがでしたでしょうか?
プロのエンジニアでも理解していないというdBuやdBFS。巷のブログで勉強しようにもデタラメばかり。まあ本当は本を買ったりして勉強しないといけないところなのですが、今回は間違った情報が出回ることを危惧してちょっとだけ書いてみました。
とりあえず適当に書きなぐったので、何か疑問点などあれば都度書き足します。
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-20dBFSについて 音響・映像・電気設備が好き